2015年12月14日月曜日

「2015年カナダ総選挙」

こんにちは
 
僕は現在、カナダの東海岸に位置するニュー・ブランズウィック (以下 N.B) という小さな州で大学に通っています。カナダと聞くと、ロッキー山脈や氷河によって形成された奇麗な湖をイメージするかもしれませんが、僕の住んでいる地域はそのような景色とは無縁の所です (笑)。お馴染みのバンクーバーまでは飛行機で半日かかるし、オンタリオ州に位置するカナダ最大の都市トロントへも飛行機で2時間半ほどかかります。ようするに多くのカナダ人にとってもあまり馴染みのない小さな州、それがN.B州です。ただ、小さな州が集中している東海岸には、入植した頃の独特な文化の面影も残り、数々のユニークな方言も点在していて非常に面白い所です。またN.B州は英語圏とフランス語圏の狭間のバイリンガルな州なので、日常生活の中で文化の融合を体感できます。
 
潮の満ち引きが見どころのBay of Fundy, N.B.州 | All Canada Photos
 
国内でも最大4時間の時差が発生し、国土面積も日本の26倍以上と広大なカナダ。税率や法律も異なり、州間での経済格差なども発生していて、「州」というのは「都道府県」の概念とは大きく異なります。一般的にフレンドリーなカナディアンですが、州によって町の雰囲気や、外国人人口の占める割合、生活様式に多様性が出てくるのがカナダの面白いところです。
 
そんなカナダですが、今年の10月中頃に行われた2015年の連邦議会選挙では“戦略的投票”が呼びかけられ、多くの国民の見事な結束が見受けられました。約10年に渡って政権を担ってきたカナダ保守党ですが、今回の選挙では低迷を続ける国内経済への具体的な打開策、シリアを含む中東地域での軍事的関与、シリア難民受け入れ、又TPP参加の有無などが議論の争点になっていました。結果的に保守党から中道左派のカナダ自由党への鮮やかな政権交代を成し遂げたカナダですが、その陰には多くの有権者の葛藤が存在しました。大きな要因の一つはカナダの完全な小選挙区制選挙制度。反・ハーパー(保守党の党首)の世論が高まっていましたが、各区で1人しか当選できない小選挙区制選挙で有権者が安易にそれぞれの第一支持政党へ票を投じることは、結果的に票が分散し、自分たちが望まない与党(保守党)候補を当選させてしまうリスクを伴うものでした。
 
僕は法律の専門家ではないので、この場では選挙制度の分析ではなく、一外国人としてカナダの選挙を見つめていた者としての感想に徹したいと思います。まず注目したいのがこういった状況下(共有された、政権への危機感の存在と、選挙制度を考慮した投票先選択の必要性)での国民一人ひとりの意識が非常に高かったこと。僕の大学の生徒会は選挙区の候補者を招き、学生の為に演説会を開催し、大々的な“選挙に行こう!”キャンペーンを実施しました。キャンパスでも日常的に生徒間の選挙の話を耳にしたし、SNS上でも数多くの議論がなされていました。
 
大学新聞2015年10月8日 | The Argosy
 
今夏の日本の安全保障関連法案の成立について、推進派の「選挙によって選ばれた政治家の作った法律なのだから仕方がない」という趣旨の発言を何度か耳にしました。これは悔しいけれど、一理あるとも思いました。国民の民意を出忠実に反映させるのは難しいことだと理解した上で、もちろん1票の重みを均一にして、死票となってしまう選挙制度は改善しなければいけないと思います。でもまずはこの慢性的に、“日常生活と政治への関連性を見出せなくなってしまっている”多くの友人・知人たちに政治参加の重要性を知らせていきたいです。選挙制度の改革を求めると同時に、自らが考えて政治に参加しているカナダの人たちを見ていて改めてそう思いました。選挙権の行使を“義務”と言い切ってしまうのは難しいのかもしれませんが、国民が担っている役割について、日本でも一人ひとりがしっかりと考えてゆくべきだと思います。
 
今回の選挙の投票率は69.1%を記録し、前回2011年の選挙から8%の上昇がありました。[1]選挙制度の改善を呼びかける動きも起こっています。
 
カナダ色の新内閣 | Politicl 


千廣
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[1] Elections Canada, “Election Night Results - National,” October 19, 2015, Access: http://enr.elections.ca/National.aspx?lang=e

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